多排出セクターにおける企業のトランジション計画策定状況調査レポート - [11]調査項目と評価カテゴリ【銀行セクター】
調査の趣旨
日本では2022年4月以降TCFD提言に基づく開示がプライム上場会社に義務化されたこともあり、ネットゼロに向けた戦略や目標の開示は進んでいるが、その実現に向けたトランジションプランの策定はまだ緒についたばかりという状況である。本調査では、日本企業において、2050年ネットゼロに向けた短・中期的な計画の具体化がどの程度進んでいるのか、特に注目される多排出産業と銀行セクターを対象に調査・分析する。
レポートの内容
調査項目と評価カテゴリ【銀行セクター】
1.1.1 Financed Emissions 目標設定状況
Financed Emissions 削減目標について、重要セクターごとに中期目標(2030年)と長期目標(2050年)が開示されているか。(下記の5段階)
1. 重要セクターの2030年以降5年ごと目標を設定
2. 重要セクターの2030年目標を設定
3. 重要セクターを特定
4. 2050年ネットゼロのみコミット
5. コミット・目標が確認できない
1.1.2 アセットクラス対象範囲
1.1.1の削減目標の対象アセットクラスはどの範囲まで含んでいるか。(コーポレートファイナンス、プロジェクトファイナンス、自己勘定投資等)
1.1.3 セクター対象範囲
1.1.1の削減目標は炭素関連資産セクター(TCFDが定義*)のうちどのセクターを対象としているか。また、セクターの重要度の分析に使用した指標と分析結果を開示しているか。
* 炭素関連資産セクター:(1)石油・ガス、(2)石炭、(3)電力、(4)空運、(5)海運、(6)陸運(鉄道 、トラック)、(7)自動車及び部品、(8)金属・鉱業、(9)化学、(10)建設資材、(11)資本財、(12)不動産管理と開発、(13)食品、(14)飲料、(15)農業、(16)製紙・林業
1. 炭素関連資産セクターの全て
2. 自社の重要度に基づくセクター (重要度の開示あり)
3. 自社の重要度に基づくセクター (重要度の開示なし)
4. セクター別の目標開示なし
1.1.4 セクター別シナリオの開示
1.1.1の削減目標の対象としたセクターごとに、公的な機関が公表している1.5℃シナリオを採用・開示しているか。(下記の2段階)
1. セクター別にシナリオ名を開示
2. セクター別のシナリオが確認できない
1.2 2030年以降の投融資ポートフォリオ計画
中長期的に投融資ポートフォリオのネットゼロを達成するため、ポートフォリオ全体の目標や指標を開示しているか。(下記の4段階)
1. パリ協定等と整合するポートフォリオの総額や割合に関する目標がある
2. 一部のセクターについてエクスポージャーに関する目標がある
3. 目標ではないが指標はある
4. 目標や指標はない/確認できない
1.3 実体経済の脱炭素化を促進するその他の指標
Financed Emissions以外に実体経済の脱炭素化を促進する定量的な目標や指標を設定しているか。(例:サステナブルファイナンスの目標金額)
2.1 移行計画の策定状況
2050年投融資ポートフォリオのネットゼロを達成するための移行計画を策定し、それを開示しているか。(下記の4段階)「具体的な」とは中間目標の達成に向けて各セクターの脱炭素を実現するために支援する事業分野、エンゲージメントの方針などが明記されていること。
1. 重要セクター別に具体的なアプローチがある
2. 全体的な移行計画が策定されている
3. 移行計画の策定中であると確認できる
4. 移行計画策定に着手されていない/確認できない
2.2 投融資方針と評価プロセス
炭素集約型の事業・資産への投融資を段階的に削減するための投融資方針や評価プロセスを定めているか。(下記の4段階)
1. セクター別の投融資方針と評価プロセスを定めている
2. セクター別の投融資方針がある
3. セクター区分のない投融資方針がある
4. 投融資方針/評価プロセスともにない/確認できない
2.3 多排出セクターの顧客とのエンゲージメント
多排出セクターの顧客とのエンゲージメントを進めるための体制・方針を定め、エンゲージメントの実績も確認できるか。(下記の3段階)
1. 体制・方針が定められ、エンゲージメント実績も確認できる
2. 体制・方針が定められているが、エンゲージメント実績が確認できない
3. 体制・方針が定められていない/確認できない
2.4 公正な移行に関する声明
公正な移行に関する方針や取り組みについて公表資料やWebサイト等で声明を出しているか。(下記の複数選択)
1. 公正な移行に関する声明がある(公表資料/Webサイトでの言及)
2. 公正な移行を進める上で関与するステークホルダーに言及している
3. 課題を特定するための手法に言及している
4. ステークホルダーへの影響の低減策について言及している
5. 公正な移行についての声明は公表資料上で確認できない
2.5 Financed Emissions計測におけるカーボンオフセットの取扱い
投融資先のカーボンオフセットの利用有無を把握しているか。カーボンオフセットの利用がある場合、Financed Emissionsの計測には含めず分けて取り扱うことを明記しているか。
1. 顧客のオフセット量を把握し、Financed Emissions計測に含めず
2. 顧客のオフセット量の取扱について今後検討すると言及
3. 顧客のオフセット量の取扱について言及なし
3.1 セクター別与信残高内訳
炭素関連資産セクター別の与信残高内訳(金額及び割合)を開示しているか。(下記の2段階)
1.開示あり
2.開示なし
3.2 セクター別移行状況
ポートフォリオの重要セクターを対象にどの程度移行が進んでいるかモニタリングを実施し、その結果を開示しているか。(下記の5段階)
1. 1.5度目標設定を基準とし、重要セクターを評価
2. 1.5度目標設定を基準とし、重要セクターの一部を評価
3. 何らかの基準で重要セクターを評価
4. 何らかの基準で重要セクターの一部を評価
5. 開示なし/確認できない
3.3.1 Financed Emissionsの実績
Financed Emissionsの実績を経年データで開示しているか。(下記の3段階)
1.経年データ
2.直近年度のみ
3.開示なし
3.3.2 アセットクラス対象範囲
3.3.1のFinanced Emissions計測において、対象アセットクラスはどの範囲まで含んでいるか。(1.1.2と同様)
3.3.3 セクター対象範囲
3.3.1のFinanced Emissions計測において、炭素関連資産セクターのうちどのセクターを対象としているか。(1.1.3と同じ4段階)
3.3.4 計測カバー率
3.3.1のFinanced Emissions計測において、計測カバー率(各セクターへの対象貸出額において、Financed Emissions を計測できた割合)を開示しているか。(下記の2段階)
1.開示あり
2.開示なし
3.4 投融資ポートフォリオの排出削減目標と役員報酬の連動
経営陣が投融資ポートフォリオの排出削減に取り組むインセンティブが働く仕組みがあるか
1.削減目標達成と役員報酬が連動している
2.削減目標以外の気候変動に関する指標と役員報酬が連動している
3.気候変動に関する指標と役員報酬は連動していない/確認できない