多排出セクターにおける企業のトランジション計画策定状況調査レポート - [10]調査項目と評価カテゴリ【非金融セクター】

調査の趣旨

日本では2022年4月以降TCFD提言に基づく開示がプライム上場会社に義務化されたこともあり、ネットゼロに向けた戦略や目標の開示は進んでいるが、その実現に向けたトランジションプランの策定はまだ緒についたばかりという状況である。本調査では、日本企業において、2050年ネットゼロに向けた短・中期的な計画の具体化がどの程度進んでいるのか、特に注目される多排出産業と銀行セクターを対象に調査・分析する。

レポートの内容

セクター一覧

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調査項目と評価カテゴリ【非金融セクター】

Ambition Design
Ambition(目標設定)

1.1.1 Scope1及びScope2 排出量目標

2050年までのScope1及びScope2排出削減目標が、 中期目標(2030-2035年)、長期目標(2036-2050年)、及びマイルストーン  (5-10年)を含めて開示されているか。(下記の6段階)

1.中・長期目標及び 2050年までの5年ごとマイルストーン
2.中・長期目標及び 2030年までのマイルストーン
3.2050年までの10年ごと目標
4.中期及び長期目標の2つ (マイルストーンなし)
5.長期目標1つのみ
6.目標開示なし

1.1.2 Scope1及びScope2 排出量目標の対象範囲

1.1.1の排出量目標の対象は企業グループのどの範囲まで含むのか。(下記の5段階)

1.グループ連結:目標の基準としている実績排出量の対象範囲に連結子会社を含み、①オフィス系を除く製造・物流拠点が含まれていると判断できるもの、または ②(売上高や排出量等に基づく)カバレッジが記載されていて75%以上のもの。
2.親(持株)会社と主要事業会社:目標の基準としている実績排出量の対象範囲が主要事業会社に限られ、連結子会社を含めてカバレッジが 75%以上と確認できないもの。(主要子会社の社数での記載や「主要子会社を含む」などの記載もこれに分類する。)
3.単体:対象範囲が単体のみと確認できたもの。
4.その他:事業(プロジェクト)単位、国内事業所のみなど、1〜3のどれにも当てはまらないもの。
5.確認できない:対象範囲の記載がないか、単に「グループ」「国内/海外」などでその範囲を示す記載がないもの。


1.1.3 Scope1及びScope2 排出量目標の基準年の排出量

直近年度の開示媒体で基準年の排出量も開示されているか。

1.1.4 Scope1及びScope2 排出量目標の単位

1.1.1の排出量目標の単位が総量か原単位か、またはその両方であるか。ただし、いずれであるかは評価結果を左右しない。

1.2.1 Scope3 排出量目標

中長期の削減目標にScope3排出量が含まれているか(1.1.1と同じ6段階)。Scope1+2+3をベースにした炭素強度などの目標も「あり」として評価した。「Scope3削減への貢献」のように定性的な目標や、「削減貢献量」は定量化の有無にかかわらず除外した。


1.2.2 Scope3 排出量目標の対象範囲

1.2.1の排出量目標の対象は企業グループのどの範囲まで含むのか。(1.1.2と同じ5段階)

1.2.3 Scope3 排出量目標の単位

1.2.1の排出量目標の単位が総量、原単位、またはその他の単位のいずれであるか。ただし、いずれであるかは評価結果を左右しない。

1.3 1.5℃目標へのコミットメント

国際的な目標であるパリ協定の1.5℃目標に対し、これを達成するための自社グループの目標設定を行っているか。(下記の3段階)

1.SBT認証またはコミット
2.1.5℃目標達成を掲げるアライアンス(例:Race to Zero)への加盟
3.コミットメントが確認できない

1.4 1.5℃を目標としたパスウェイ(排出経路)のベンチマーク

公的な機関が公表している1.5℃シナリオ下でのセクター別パスウェイを参照し、自社の削減実績や設定している目標とパスウェイとの乖離を把握しているか。(下記の3段階)

1.セクターの1.5℃パスウェイと同等またはそれより早い削減状況である
2.セクターの1.5℃パスウェイに対し、削減は遅れている
3.ベンチマーキングしていない

1.5 2030年以降の事業ポートフォリオ計画 

中長期的に事業全体をカーボンニュートラルに変革していくため、事業ポートフォリオレベルの計画を描き、これを開示しているかどうか。(下記の3段階)

1. 数値目標を伴う計画を公表している
2. 数値目標は示されていないが計画は公表している
3. 計画が公表されていない/確認できない

1.6 公正な移行に関する声明

公正な移行に関する方針や取り組みについて公表資料やWebサイト等で声明を出しているか。(下記の複数選択)

1. 公正な移行に関する声明がある(公表資料/Webサイトでの言及)
2. 公正な移行を進める上で関与するステークホルダーに言及している
3. 課題を特定するための手法に言及している
4. ステークホルダーへの影響の低減策について言及している
5. 公正な移行についての声明は公表資料上で確認できない

Ambition Design
Action(計画実行)

2.1 足元3〜5年の実行計画の具体性

2030年目標の達成のために足元3〜5年の短期の具体的な実行計画を立て、それを開示しているか。「具体的な」とは削減策が明記されていること、その削減策を実行・完了する期限が示されていることを指す。

1. 具体的に開示:中長期的な削減計画を立てており、その中で足元3〜5年に実行する削減手段を明記している。
2. 開示しているが部分的:期限が明確でない削減策が示され、一部の削減策について5年以内の実行計画が確認できる。
3. 開示が確認できない:期限が明確でない削減策が示され、5年以内に実行する削減手段がどれなのか明確でない。

2.2 主要な排出源を含む計画

排出削減計画に主要な排出源を含めているか。(下記の3段階)

1.削減計画に主要な排出源が含まれている
2.削減計画に主要な排出源が含まれていない
3.確認できないまたは主要な排出源の開示なし

2.3 排出削減手段

排出削減の手段を開示しているか。開示がある場合、その種類。(下記の9分類)

1.製品・サービスの見直し・新規開発
2.燃料転換
3.再生可能エネルギーの創出、調達                    
4.省エネ
5.既存設備の高性能/効率化
6.物流の見直し
7.ネガティブエミッション技術の利用
8.カーボンクレジット
9.その他

2.4 排出削減手段ごとの削減量目標

排出削減手段ごとの削減量目標が設定されているか。

1.削減手段ごとに削減量目標がある
2.削減手段ごとの削減量目標はない/確認できない


2.5 カーボンオフセットの利用

自助努力での排出削減を優先し、カーボンオフセットの利用は2030年以降の目標未達分に限るという意向があるか。(下記の4段階)

なお、カーボンオフセットの利用がある場合、取引(予定)量を開示しているか、既に利用している場合はクレジット制度と第三者認証の有無を確認した。

1. 目標未達分に限り2030年以降に利用
2. 目標未達分に限り2030年以前に利用
3. 目標未達分に限らず利用
4. オフセットの利用が確認できない

Ambition Design
Accountability(実績の開示)

3.1.1 Scope1及びScope2 開示状況(排出量実績)

Scope1及びScope2 排出量の実績を3年以上の経年データで開示しているか。(下記の6段階)

1.Scope1&2 各々の経年データ
2.Scope1+2合算の経年データ
3.Scope1&2 各々の直近年度のみ
4.Scope1+2合算の直近年度のみ
5.Scope1の経年データ又は直近データのみ
6.開示なし

3.1.2 Scope1及びScope2 排出量の集計範囲

3.1.1の排出量の集計対象が企業グループのどの範囲まで含むのか。(1.1.2と同じ5段階)

3.1.3 Scope1及びScope2 排出量の単位

3.1.1の排出量目標の単位が総量か原単位か、またはその両方であるか。ただし、いずれであるかは評価結果を左右しない。

3.2.1 Scope3 開示状況(排出量実績)

Scope3 排出量の実績を3年以上の経年データで開示しているか。(下記の3段階)

1.経年データ
2.直近年度
3.開示なし

3.2.2 Scope3 排出量の集計範囲

3.2.1の排出量の集計対象が企業グループのどの範囲まで含むのか。(1.1.2と同じ5段階)

3.2.3 Scope3 排出量の算定カテゴリ

Scope3 排出量をカテゴリ別に開示しているか。(下記の4段階) 企業が「該当しない」と付記したカテゴリは開示したものとする。

1.上流(カテゴリ1〜8)+下流(カテゴリ9〜15)
2.一部カテゴリ
3.確認できない

3.3 集計対象のGHGの種類

CO₂に限らず他のGHGについても排出量を開示しているか。(下記の3段階)

1.CO₂以外のGHG含む(明記あり)
2.CO₂以外のGHG含む(明記なし)
3.CO₂のみ

3.4 算定基準

GHG排出量の算定基準(例:GHGプロトコル、温対法 等)を開示しているか。

3.5 主要な排出源

企業グループにおいて主要な排出源となっている事業、事業プロセスなどを開示しているか。以下のいずれかに該当するものを開示ありとする。

①グループに複数の事業を持つ場合、最も排出の多い事業または事業プロセスに言及している、またはそれが分かる排出量データを開示している
②単一事業の場合、最も排出の多い事業プロセスに言及している、またはScope1,2,3(カテゴリ別)を全て開示している

3.6.1 第三者保証の対象

開示しているGHG排出量(Scope1、Scope2、Scope3)に対し第三者による保証を受けているか。

1.Scope1、Scope2、Scope3の開示カテゴリ全て
2.Scope1、Scope2、Scope3の開示カテゴリの一部
3.Scope1とScope2
4.その他
5.保証なし

3.6.2 第三者保証の保証基準

GHG排出量のデータの第三者保証の手続きは国際的な保証基準(国際監査・保証基準審議会(IAASB)や国際標準化機構(ISO)の定めた保証基準)に準拠しているか。



3.7 排出削減目標と役員報酬の連動

経営陣が排出削減に取り組むインセンティブが働く仕組みがあるか。

1.削減目標達成と役員報酬が連動している
2.削減目標以外の気候変動に関する指標と役員報酬が連動している
3.気候変動に関する指標と役員報酬は連動していない/確認できない

Aya Shiraishi