サステナビリティの視点から見た産業の未来〜自動車セクター編

 
 


自動車産業のいま

2024年、世界全体で四輪車は9,250万4千台生産された(*1)。世界の自動車市場は年間約2.9兆米ドルに達し、単一製品としては最大規模の市場の一つである。自動車産業は2024年には世界のGDPの約1%を占め、自動車製造による直接的および間接的な付加価値(例えば自動車産業は、鉄鋼などの他の関連セクターにも付加価値をもたらしており、先進国では鉄鋼需要の10%以上を占めると言われる)を合わせると、世界のGDPへの貢献は約3%になるとされている(*2)。

さらに、やや古いデータではあるが、ILO(国際労働機関)は「2017年時点で、自動車産業は全世界で1,400万人近い労働者を直接雇用している」としている(*3)。European Automobile Manufacturers' AssociationやAlliance for Automotive Innovationのデータに基づくと、1人の直接雇用が周辺産業で約5〜10人の雇用を誘発すると分析しており、関連セクターを含めると数千万人の雇用を支えている計算になる。トヨタ自動車が2025年に公開したFact Data (Global Automotive Industry)では、中国4,600万人、米国890万人、日本550万人、ドイツ290万人、韓国170万人が関連セクターを含めた雇用規模と推計されており、5カ国の合計だけでも6,500万人になる(*4)。

このように自動車産業は、世界の経済活動のなかで大きな存在であり、他産業への波及効果が大きい産業であることで知られる。しかし、その勃興から現在までの時間は、150年足らずの比較的短期間であることも見逃せない。


自動車産業の生い立ち

フランスのキュニョーが「蒸気自動車」を発明したのは、1769年であるが、薪炊きの「走る巨大なヤカン」のような構造をした車体は実用性に乏しく、馬や馬車に取って代わることはできなかった。ドイツのカール・ベンツが、世界初のガソリン自動車「パテント・モトールヴァーゲン」の特許を取得したのは、1886年のことである。さらに、ヘンリー・フォードが「フォード・モデルT」を発売するのが1908年、ベルトコンベアによる移動組立ラインを導入することで価格が劇的に下がり、モータリゼーション(車社会化)の幕が切って落とされるのが1913年のことであった。

ガソリン自動車の出現は利便性の観点から、人類の生活形態に対して革命的というべき変化をもたらした。人類の歴史において、火薬銃の発明に匹敵する意味を持ったとする識者もいる。自動車は、それまで想像できなかったような形態で移動する能力を人間に与えた。と同時に、物を運搬することでも巨大な重量物を遠くまで運ぶことができるようになって、世の中は劇変することになった。

具体的に言えば、自動車が持つ最大の利便性は、住む場所や働く場所から直接に移動手段を利用できるという点にある。さらに、所有者は自ら欲し、あるいは必要とするときに、いつでも自動車を利用できる。しかも、それまでの常識では考えられなかった速度で移動できることを可能にした。これら効用の絶対的大きさが、その後の普及の原動力となった。

他の関連セクターへの波及性の観点からも、自動車は一国の経済活動の構造に革新的な変化をもたらした。自動車は、その生産過程において、金属資源や工業的に加工された部品を数多く使う。このことから自動車生産はすそ野の広い産業クラスターを形成する。これが企業家や資本家にとって莫大な利潤獲得の機会と注目された。

加えて、既存の道路、街路は、拡張され、舗装がなされ、自動車通行に最適となるよう作り変えられることになった。こうしたインフラストラクチャの整備が自動車普及を加速させた側面があり、同時に、自動車普及が新たな公共投資を誘発させた側面も否定できない。その典型が高速自動車専用道路の建設であろう。公共事業として行われた高速自動車専用道路建設は、土木建設産業に対する巨大な有効需要を創出し、その利潤を多くの関係者が享受した。こうした構造は、1950年代以降の日本において、顕著に見出された。

また使用段階では、自動車は莫大なエネルギー資源としての石油を使う。米国テキサス州ボーモント近郊にあるスピンドルトップという丘で、1901年1月10日の掘削中、地下約350メートルから、突然爆発音と共に泥と石油が噴き出した出来事は「スピンドルトップの噴油」と呼ばれる。その高さは約45メートルに達し、1日で約10万バレルが噴出、その噴出は9日間にわたって止まらなかったと伝えられる。この出来事は、投資家や掘削技術者をテキサスへ呼び寄せる「オイルラッシュ」の引き金になった。数年のうちに、テキサス州で巨大な他の油田も発見され、石油の供給量が劇的に増加。これにより燃料としての価格は画期的に下がったのだった。この直後に大衆向けガソリン自動車は出現した。ガソリン燃料の価格下落が、自動車普及を加速させた面は見逃せない。同時に、自動車普及が石油需要を下支えし、石油開発を後押しした側面も否定できない。この結果、のちに「セブン・シスターズ」(*5)と呼ばれるような巨大石油資本が成長していく。

このようにして、自動車産業は自動車生産に連なる幅広い関連産業、道路建設に関わる土木建設産業、ガソリン供給の元締めとしての巨大石油資本という四位一体、あるいはそこに公共工事で有効需要を創出する政府セクターを加えた五位一体の利益構造のもとで、その存在感と影響力を確立したということができるだろう。その生い立ちは、少なくとも米国、欧州、日本では共通のものだったと考えられる。


自動車産業とゼロエミッション

こうした自動車産業の存在感と影響力の大きさは、いつの間にか、自動車産業の将来性に疑義を差し挟むことはタブーであるかのような空気感さえ作り出してしまう。自動車を否定することは、人間の利便性追求を否定することに等しく、また人々の雇用を脅かすことに等しいという認識が、その背景には漂っている。

事実、2030年に至る世界の自動車販売台数の推移は、まだまだ増加するとの予想がなされている。S&P Global Mobilityは、2030年には世界で1億台以上のライトビークル(乗用車・小型商用車)が販売されると予想している(*6)。先進国の「車離れ」による減少分を、インド、ASEAN、アフリカなどの新興国における「初めて車を持つ層(ファーストマイカー層)」の爆発的な増加が補うという構図が基調となっている。

他方で、自動車の普及は、気候危機を深刻化させる大きな懸念材料のひとつにもなってきた。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書(2022年公表、2019年データ)によれば、世界の温室効果ガス(GHG)総排出量に占める自動車走行(道路輸送)の割合は約16%とされている(運輸部門全体が23%を占め、うち69%が道路輸送とされていることから導出)(*7)。運輸関連の温室効果ガス排出量は過去20年間で急増しており、2010年以降は、運輸部門の排出量は他のどの最終用途部門よりも速いペースで増加してきた点も見逃せない。その理由は、世界の輸送活動レベルの急速な増加によるもので、2000年から2018年の間に73%という増加を見せている。この期間、旅客および貨物活動の増加は、エネルギー効率および燃費の改善を完全に上回ってしまったのである。

運輸部門の温室効果ガス排出量の傾向と内訳

 
 

(出所) IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書(*8)


IPCC第6次評価報告書は、軽量パワートレインが自動車からの温室効果ガス排出量を大幅に削減する可能性があるにも関わらず、消費者の大型スポーツ用多目的車(SUV)への嗜好に牽引され、あらゆる車両サイズクラスにおいて車両サイズとエンジン出力が増大する傾向にあることに警鐘を鳴らしている。世界規模では、SUVの販売台数は過去10年間で着実に増加しており、2019年に販売された車両の40%がSUVだったという。

こうした状況に、自動車メーカーが問題意識を持ってないというわけではない。KSI.(鎌倉サステナビリティ研究所)による「多排出セクターにおける企業のトランジション計画策定状況調査・自動車セクターレポート(以下KSI.自動車セクターレポート)」p.15に示されているように、Scope3排出削減目標として、調査対象とした各社は製品CO2排出量、すなわち走行距離当たり平均CO2排出量(g-CO2/km)を設定し、日本企業5社中4社は2050年、海外企業ではGMとMercedesがそれぞれ2040年、2039年にあらゆる車両クラスのカーボンニュートラルを目指すとしている。

分かれる電動化への見方

自動車という製品利用全体を視野に入れるとき、気候変動対策の類型には、大きく①電動化、②代替燃料(天然ガスベースの燃料、バイオ燃料、アンモニア、およびその他の合成燃料)の利用、③燃料電池の採用の三つの系統がある。

このうち①電動化は、近年、対策の切り札として大きな期待を集めてきた。ただ、「電気自動車」が、実は100年以上前から存在していたという歴史はあまり知られていない。米国では、1890年頃、アイオワ州デモインに住んでいた化学者ウィリアム・モリソンにより最初の電気自動車が誕生、1900年までに電気自動車は全盛期を迎え、路上を走る車両の約3分の1を占めるようになっていた。その後10年間、電気自動車は好調な売上を記録し続けたという(*9)。それが、量産化された「フォード・モデルT」の登場と電動スターターが発明されて手動クランクが必要なくなったことで、ガソリン車が電気自動車を駆逐してしまった。1935年までに電気自動車はほぼ姿を消したといわれる。

1990年、米国カリフォルニア州では大気汚染(スモッグ)対策として自動車メーカーに対し、販売台数の一定割合を「ゼロ・エミッション(排出ゼロ)」の車にするよう義務づけるZEV規制が制定された。当初、自動車メーカーは、「カリフォルニア州で車を売り続けるための通行許可証」を得ることを目的にEV車の開発と生産に乗り出す。これが、足元に繋がる自動車電動化ブーム再燃の嚆矢である。2021年の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)では、「主要市場で2035年まで、世界全体では2040年までに、乗用車や商用バン(Cars and Vans)の新車販売全てをゼロエミッション車(EVやFCEV)にするという宣言」が発表されたりもした。

電気自動車(PHEVを含みHEVは含まない)の販売台数は2024年に世界で1,700万台を超えた。世界中で販売された新車の20%以上が電気自動車だったという計算になる。

世界の電気自動車販売台数(2014~2024年)

 
 

(出所) INTERNATIONAL ENERGY AGENCY, “Global EV Outlook 2025”
 Global EV Outlook 2025, IEA, Paris https://www.iea.org/reports/global-ev-outlook-2025, Licence: CC BY 4.0

ただ、2025年については、米国では、補助金の削減や充電インフラ普及への懸念(*10)から普及スピードが一時的に鈍化したとの観測がある。また、2023年12月には欧州最大の市場であるドイツで電気自動車への購入補助金が突如終了し、2024年通年では欧州のBEV市場が前年比減少になったとされる。さらに2025年12月、欧州委員会は2035年の新車販売におけるCO2排出削減目標を、これまでの「2021年比100%削減」から「90%削減」に変更する修正案を発表している。こうした状況は「EV減速説」の論拠にもなっている。

果たして、電動化は、自動車業界にとって、気候変動対策の切り札になり得るのだろうか。その鍵は、①技術革新とコストダウン、②インフラ整備と化石燃料を巡る政治力学のふたつが握っていると考えられる。バッテリーに蓄えられた電力のみを動力としてモーターを回し走行するバッテリー式電動自動車(BEV)の弱点は、(1)走行距離、(2)充電時間、(3)車両重量、(4)安全性、(5)バッテリー製造にかかる環境負荷や資源制約に代表される。したがって、先ず第一には、バッテリー自体に一層の技術革新が必要になる。鉛蓄電池がリチウムイオン電池に取って代わられたような、次のイノベーションが決め手となるだろう。第二には、充電インフラの劇的な普及が必要になる。新車販売の過半数が電気自動車になったとされる中国では公共用充電器設置数は410〜470万基、欧州は100〜120万基、米国は20〜25万基となっている(*11)。日本においてはGX経済移行債を通じた投資の対象として、自動車分野で2030年までに公共用充電器を現在の3万基から30万基に増やす計画がある(*12)。第三には、バッテリーに蓄える電力が非化石燃料起源のものになることが必要である。IPCC第6次評価報告書も「バッテリー電気自動車(BEV)は、低炭素電力で充電した場合、内燃機関車(ICEV)よりもライフサイクル全体の温室効果ガス排出量が少ない」とその点を強調している。

バッテリーに蓄える電力の問題は、化石燃料を巡る政治力学とも密接に結びついている。石油産油国や巨大石油資本は、ガソリン自動車のシェア低減を招く電動化とは利害が対立する。さらに、化石資源産出国の多くや化石燃料関連産業は、電力が非化石燃料起源のものになることに抵抗感を示す。この点では、現時点での米国もロシアも立場は一致している。世界的に、化石燃料依存からの脱却に合意が得られない現状のもとでは、「電動化が自動車業界にとって気候変動対策の切り札になり得る」とする言説には疑問符がつきまとう。

わが国自動車産業の電動化懐疑論の特殊性

とりわけ日本においては、自動車産業の電動化懐疑論が顕著である。KSI. 自動車セクターレポートにおいても、p.15~p.17において、日本の自動車メーカーの、販売台数に占める電気自動車の割合の低さを指摘している。その背景にあのは、(1)モノづくりへの拘り、(2)雇用への影響懸念、(3)脱化石資源化への非現実感であろう。

2021年4月22日に行われた日本自動車工業会の記者会見で豊田章男会長(当時)は、「日本には、優れた環境技術、省エネ技術がたくさんあります。何よりも個々の優れた技術を組み合わせる「複合技術」こそが日本独自の強みであると思っております」、「日本の自動車産業がもつ高効率エンジンとモーターの複合技術に、水素から作る「e-fuel」やバイオ燃料などの新しい燃料を組み合わせることができれば大幅なCO2低減というまったく新しい世界が見えてまいります。」と述べた。2021年9月9日の記者会見でも「カーボンニュートラルにおいて、私たちの敵は『炭素』であり、『内燃機関』ではありません」、「カーボンニュートラルは雇用問題でもあるということを忘れてはいけないと思います。私たちが、必死になって選択肢を広げようと動き続けているのは、自動車産業550万人の雇用、ひいては日本国民の仕事と命を背負っているからです。」と述べている。

さらに2021年4月22日の「東京オートサロン2024 モリゾウから新年のご挨拶」では「エンジンに携わる人たちは、最近、銀行からお金を貸してもらえないこともあるそうです。そんなこと、絶対にあってはならない…、なんとかしていきたいと思いました。」、「日本は火力発電の割合が高いため、製造工程や充電時の電力を考慮すると、EV化だけでは真の脱炭素にならないこと、またエンジン部品メーカーなどのサプライヤーが壊滅的な打撃を受けることを危惧しました。」と記している。

足元の化石燃料の日本への積極輸出を掲げるトランプ政権の動向を鑑みれば、わが国の電力が非化石燃料起源のものになることは当面は望めないし、ガソリン需要を低減させる日本の自動車電動化政策を本格化させようものなら米国からの抵抗圧力を真正面から受けかねないとの見方も成り立つ。その文脈からは、わが国の自動車産業が電動化に懐疑的であるのは、一定の合理性があるように足元では見える。果たして、日本の自動車産業の掲げる「現実主義」が競争力維持に繋がるのか否か、現時点では断定できない。繰り返しになるが、バッテリーの技術革新とコストダウン、インフラ整備と化石燃料を巡る政治力学の変化がその鍵を握っている。

さらに巨視的に見た自動車産業の未来

自動車産業の存在感と影響力の大きさは否定できないとは言うものの、サステナビリティの視点から見たとき、自動車産業の正当性は必ずしも担保されるとは限らないという点を最後に指摘しておきたい。

わが国が世界に誇る碩学の宇沢弘文氏が著書「自動車の社会的費用」において車社会がもたらした負の側面に鋭く切り込んだのは1974年のことであった。「自動車は、その利便性を享受する人が払っているコスト以上に、社会全体に多大な犠牲を強いているのではないか」という問いかけがその本質にあった。車に乗る際、ガソリン代や保険料などの「私的費用」を支払ってはいるが、宇沢氏は自動車の走行によって発生する騒音、排気ガス(公害)、交通事故、渋滞などは、車に乗っていない第三者が一方的に押し付けられているコストであると指摘した。特に、かつて自由に歩けた道路が、自動車優先になったことで「通行の自由」や「安全」が奪われたことを、金銭に換算できない重大な損失となったこと、自動車が排気ガスを出し、事故のリスクを撒き散らしながら無料で道路を走ることは、社会が自動車ユーザーに「補助金」を出しているのと同じであり、経済学的に見て極めて不公正であることを告発した点は画期的だった。そこには、経済活動が人間の幸福や尊厳を壊してはならないという宇沢氏の信念が凝縮されており、後の「社会的共通資本(Social Common Capital)」という理論に繋がる重要なステップとなった。

その本質は現在も変わってはない。世界保健機関(WHO)の2023年報告書によると、毎年約119万人が交通事故で命を落としており、交通事故による死亡(道路交通外傷)は、全年齢層における世界の死因ランキングで第12位となっている。とりわけ、子どもや若者の主要な死因となっており、5歳〜29歳の年齢層ではトップクラスの順位を占めているのである。

日本では、モータリゼーションの結果、公共交通機関が衰退し、人口構造の少子高齢化に伴って、多くの交通難民、言い換えれば「移動」に著しい不都合、不便が生じている人々を生んでいることも見逃せない。

IPCC第6次評価報告書は、乗用車、二輪車、三輪車、ミニバスは、旅客輸送に関連するCO2排出量の約75%占める一方、集合輸送サービス(バスおよび鉄道)は、世界の旅客輸送の5分の1をカバーしていながらCO2排出は旅客輸送に関連する量の約7%に過ぎないことを指摘している。このことを前提として、都市形態、行動プログラム、循環型経済、共有経済、デジタル化の傾向の変化こそが、交通サービスに対する需要の削減や、より効率的な交通手段の利用拡大につながる体系的な変化を支援する可能性があることを強調しているのである。具体的には、コンパクトな土地利用と自動車依存度の低い交通インフラの整備を組み合わせることで、交通関連の燃料消費量を約25%削減できると試算されている。

乗用車の利用に関しては、個人排出量取引の対象として親和性が高いとする見解もある。車両登録が既に制度化されており、燃料消費量や走行距離の把握も比較的容易にできるからである。

今後、気候危機が人の生命や健康に深刻な脅威となる状況が一層、進展したとき、自動車利用に対する抑制機運が劇的に高まる可能性がないと言い切れるだろうか。現時点で「自動車には、人間の飽くなき利便性の追求と欲望の象徴」という側面もある。人間の飽くなき利便性の追求と際限のない欲望が不変だとすれば、自動車産業の未来は現在の延長線上で盤石であろう。集合輸送サービス(バスおよび鉄道)への回帰は、机上の空論に過ぎないということになる。逆に、気候危機が深まり、サステナビリティへの脅威が、人々の意識を変え、行動変容をもたらすのであれば、自動車産業は他の輸送モードや新たな交通インフラ整備に関与していくことでしか存続の余地はないだろう。果たして、人類はどちらの選択肢を歩むのであろうか。自動車産業の未来は、「人間はどこまで賢明か」という命題に置き換えられるのである。


略語

BEV: Battery Electric Vehicle、バッテリー式電動⾃動⾞。バッテリーに蓄えられた電⼒のみを動⼒としてモーターを回 し⾛⾏する。

FCEV: Fuel Cell Electric Vehicle、燃料電池⾞。⽔素を燃料とし、⾞載の燃料電池で⽔素と空気中の酸素による化学反応 で⽣成した電気でモーターを回して⾛⾏。⾛⾏中にCO2を出さない。

HEV: Hybrid Electric Vehicle、ハイブリッド⾞。エンジンと電気モーターの両⽅を動⼒として搭載する。

PHEV: HEVと同様にエンジンとモーターの両⽅を搭載するが、外部の充電スタンドからバッテリーを充電できる点が異なる。

ICEV: Internal Combustion Engine Vehicle、内燃機関⾞。ガソリンやディーゼルなどの燃料を燃焼させて動くエンジン により⾛⾏する


注釈

注釈

1. https://www.jama.or.jp/statistics/facts/world/index.html

2.https://www.iea.org/reports/what-next-for-the-global-car-industry/the-global-car-industry-in-context

3. https://www.ilo.org/ja/media/9601/download

4. https://global.toyota/pages/fact-data/fact-data_001_02_en.pdf

5. 第二次世界大戦後から1970年代にかけて世界の石油産業(主に油田の権利、生産、精製、販売)を支配していた7つの国際オイルメジャー。後のエクソンモービル、ロイヤル・ダッチ・シェル、シェブロンなどを含む。

6. https://www.spglobal.com/mobility/en/products/light-vehicle-sales-forecasts.html

7. https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg3/chapter/chapter-10/

8. Jaramillo, P., S. Kahn Ribeiro, P. Newman, S. Dhar, O.E. Diemuodeke, T. Kajino, D.S. Lee, S.B. Nugroho, X. Ou, A.  Hammer  Strømman, J. Whitehead, 2022: Transport. In IPCC, 2022: Climate Change 2022: Mitigation of Climate Change. Contribution of Working Group III to the Sixth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change [P.R. Shukla, J. Skea, R. Slade, A. Al Khourdajie, R. van Diemen, D. McCollum, M. Pathak, S. Some, P. Vyas, R. Fradera, M. Belkacemi, A. Hasija, G. Lisboa, S. Luz, J. Malley, (eds.)]. Cambridge University Press, Cambridge, UK and New York, NY, USA. doi: 10.1017/9781009157926.012

9. https://www.energy.gov/articles/history-electric-car

10. 新車EV購入時に最大$7,500を還付していた連邦税額控除が、2025年9月30日をもって終了。全米規模での急速充電網整備に充てられていた予算も、大統領令や予算削減案によって執行が停止・大幅縮小された。

11. https://www.iea.org/reports/global-ev-outlook-2025/electric-vehicle-charging

12. https://www.meti.go.jp/press/2023/10/20231018003/20231018003-2.pdf


執筆者

KSI.特別顧問 足達英一郎

株式会社日本総合研究所フェロー。1962年、東京生まれ。1986年、一橋大学経済学部卒業。1990年、株式会社日本総合研究所入社。経営戦略研究部、技術研究部を経て、1999年から同社で環境問題を始めとするサステナビリティの諸課題を切り口にした産業調査、企業評価の業務に従事。2006年からはESGリサーチセンター長、2021年からは常務理事なども務めた。 2003~2004年には、社団法人経済同友会の第15回企業白書の発行に携わる。その後、同社会的責任経営推進委員会ワーキング・グループメンバー。また、2005年03月~2009年05月には、ISO26000作業部会日本エクスパートとして「組織の社会的責任に関する国際規格ISO26000」の策定に携わる。 現在、ISO/TC322(サステナブルファイナンス)日本国エクスパートならびに国内対応委員会委員長、環境省グリーンファイナンスに関する検討会委員、株式会社三井住友フィナンシャルグループ取締役会サステナビリティ委員会委員、DM三井製糖株式会社サステナビリティ委員会委員、公益財団法人三菱商事復興支援財団理事、一般財団法人地域公共交通総合研究所アドバイザリー・ボード委員、一般社団法人環境金融研究機構顧問、公益信託商船三井モーリシャス自然環境回復保全・国際協力基金運営委員も務める。 主な著書、共著書に、「環境経営入門」(2009年、日本経済新聞出版社)、「自然資本入門 国、自治体、企業の挑戦」(2015年、NTT出版)、「投資家と企業のためのESG読本」(2016年、日経BP社)、「ビジネスパーソンのためのSDGsの教科書」(2018年、日経BP社)、「SDGsの先へ ステークホルダー資本主義」(2021年、集英社インターナショナル)、「ESGカオスを超えて 新たな資本市場構築への道標」(2022年、中央経済社)、「サステナビリティ審査ハンドブック」(2022年、金融財政事情研究会)、「サステナブルファイナンス最前線」(2023年、金融財政事情研究会)など。